El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

タモリ論

マンネリズムの偉大さ

タモリ論 (新潮新書)

タモリ論 (新潮新書)

  • 作者:樋口 毅宏
  • 発売日: 2013/07/13
  • メディア: 新書
 

タモリや同時代の芸人についてのウンチク本ともいえるが、評者の人生と重ね合わせると、タモリが30年以上「いいとも」をやってきたことの偉業さを気づかせてくれる。また、その偉業を成し遂げるために必要だった、ある意味、世間や人生に対する諦観を30数年の中で身に着けていったということであろう。淡々と30年続けていける心性とはいかに形成されるのか。直接そのことが書いてあるわけではないが、定年前後の読者には、今後の生き方にわずかなりとも影響を与えてくれるのではないか。丘沢静也氏の「マンネリズムのすすめ」にも通じる。偉大なるマンネリズムの中にありて、ところどころキラリと輝く星のような楽しみ・成果を残したりもしながら、マンネリズムから逸脱することなく、ゆるい傾斜をそうきつくも感じずに上っていく、それはウォーキングのように、肉体も維持しながら、人生を豊かに生きていく優れた方法論でもあるだろう。タモリ本でそれを知るとは、世の面白さでもある。

マンネリズムのすすめ (平凡社新書)

マンネリズムのすすめ (平凡社新書)

  • 作者:丘沢静也
  • 発売日: 1999/06/16
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)