テストステロンに支配された頃もあった・・・
「テストステロン」、いわゆる男性ホルモン。最近、性同一性障害(LGBTQ)や性分化障害(DSD)という告知や、入院診断書を見る機会が増えているのではないでしょうか。その中で女性→男性という治療を受けている場合にはテストステロンを投与されていることが多いです。
このテストステロン、男の男たる部分を作り出すホルモンですが、いまいちマイナーです。まず、女性からすれば男性の「エラそうな」「暴力的な」「浮気な」などなどの性質について、男がそれは「テストステロンのせいだから」と言い訳するのが許せない。暴力的で浮気性なのは、ホルモンのせいではなくて、それを許すような男社会のせいだろう!ふざけるな・・・と、言いたい気持ちはよくわかります。
この本はそんなテストステロンについて女性研究者が書いています。著者もかってはそういう「ジェンダー平等的な考え方」=「男女の差は、生得的な差ではなく、歴史が作り上げた男女不平等社会に由来するもので、男女の差を生物としての人間のオス・メスの差にすりかえるのは許せない」だったのです。しかし、研究をすすめていくとやはりテストステロンの働きは絶大で、男の男たる(?)「エラそうな」「暴力的な」「浮気な」部分はテストステロンのせい(おかげ?)だということを認めざるを得ないという結論に到達する、その数々のテストステロン研究のステップがつぶさに書かれています。
前半は、テストステロンに関わる疾患である①アンドロゲン不応症、②5-αリダクターゼ欠損症、③先天性副腎皮質亢進症のような性分化障害の症例からテストステロンが不足したり過剰だったりすればどういう症状がでるのか、どう治療していくのか、という医学的なテーマ。
後半は、男女の性行動の違いをもたらすテストステロンの驚きの働き・・・、しかし私自身は男性として思春期の性衝動などを経験してきて、これまで「それって思春期なら男女同じように起こるんだよね」と思ってきましたが、「思春期男性の全身ぺ○スのような性衝動はテストステロンがもたらすものであり、女性の思春期とはぜんぜん違う」ということをこの歳になって知り愕然としましたよ(バカですね・・)。たぶん、この思春期性衝動の男女差って男女それぞれわかってないんじゃないかな。このことに気づいた、その点だけでも読んでよかったです。
もちろん、テストステロンの分泌が続いていて思春期のような性衝動を抱えたままの中高年男性がいることもみなさんご存知のとおり。クーリッジ効果(これもまた、身につまされる男性多いのでは?)というのもテストステロン? 管理社会で真面目に生きる上でテストステロンを克服することって結構大変。そんな感覚が女性にはないというのも驚きの事実!
もちろん、性衝動の話だけではなく、オリンピックの性別問題や性同一性障害(LGBTQ)や性分化障害(DSD)の治療過程におけるテストステロンの作用など、知っておきたいテーマも盛りだくさん。しかし、しかし、「性」に対して、男女がこれほど違うというのが、やはり一番の驚きでした。