El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

プーチンのユートピア

政治家・官僚(含む大統領)≒実業家≒マフィア

権力者や監督権限を持った者が、その権限を使ってとにかく自分に利益誘導しようという国がまさにプーチンのロシア。それって表立っては書きにくいことなんだろう。著者はモスクワのテレビ局でディレクターやインタビュアー的な仕事をする中でのエピソードという形でプーチンのロシアの諸相をリアリティ番組のように(いや、リアリティ番組のパロディなのでリアルそのもの?)伝えてくれる。

富豪の愛人になろうとする女たちとそのための学校。ソ連崩壊後、地方の秩序を保ったギャング(のち映画監督)。売春婦とテロリストの姉妹。政権批判のパロディ化で批判そのものを無毒化するという手法。カルト的コーチング集団。権力を利用した企業乗っ取り。新兵いじめ・殺し。国策事業で財産作り。財産作ったらロンドンに逃げて、逃げた先でもひと悶着。

もう、むちゃくちゃでんがな・・・。そのむちゃくちゃの事例の積み上げがじわっとプーチンのロシアの実像を結んでくれる。

ただ、これらむちゃくちゃのミニチュア版は日本にもあるよね「〇〇〇マスク」とか・・・

(メモ)

特設サイト『プーチンのユートピア――21世紀ロシアとプロパガンダ』(ピーター・ポマランツェフ 著、池田 年穂 訳)| 慶應義塾大学出版会 (keio-up.co.jp)

21世紀のロシアでは、独裁さえもリアリティー・ショーである――。

ロシア系イギリス人のTVプロデューサー、ピーター・ポマランツェフ。
急成長を遂げるロシアのテレビ業界に潜入した彼は、図らずもロシアのあらゆる腐敗と遭遇する。映画監督に転身したギャング、ロシア史上最高の政治工学者、自爆テロ組織「黒い未亡人」を離れる売春婦、自殺したスーパーモデルとセクト、ロンドンに逃れ栄華を極めるオリガルヒ(新興財閥)――。
モスクワ劇場占拠事件や、ベロゾフスキーとアブラモヴィッチの裁判に立ち合い、ロシア・メディアの内側に蠢くプロパガンディストのやり口を知るポマランツェフは、プーチン独裁の先鋭化とともに、自身もまたその体制内部に引き込まれていることに気づく。

カネと権力に塗れたシュールな世界で、新たな独裁体制を築くプーチン。
クレムリンに支配されたメディアの内側から、
21世紀のロシア社会とプロパガンダの実態を描く話題作。