El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

暗く聖なる夜(上・下)

ハリー・ボッシュ シリーズ(9) 娘(マディ)の登場が救いに

前作でロス市警を退職したボッシュが自らかかわった未解決事件を、私人として警察官時代のコネをフル活用して解決する物語。しかし、冷静に考えると、ベースにある犯罪(強盗)にくらべて、その犯罪の露見を防ぐための犯罪(FBI殺し、警官殺し、ボッシュ襲撃)のリスクが大きすぎないか?

2003年の刊行なので9・11後のテロ対策と絡んでくる、というか絡めたために、さらに死者が増えていく。悪い奴の大半が死ぬか、死んだも同然となるが、かえって安易に殺害された女性たちのことを想うと何ともやりきれない。

最後にボッシュの娘(マディー)が初登場、これで少し救われた気分になれる。(ボッシュ53歳)