El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

第三の嘘 (悪童日記第3部)

 記憶のコラージュ

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

 

悪童日記」「ふたりの証拠」と物語を入れ子状態にし、何が真実かわからない・・ところに追い込まれて第三部「第三の嘘」へ入る。

これまでに起こった(とされている?)エピソードも話者が変わり、時が流れ、少しずつずれていく。何が本当のなのかわからない。同じエピソードも意味合いがずいぶんとちがってくる。

現実とはそういうものなのだろう。あの事件は何が原因だったのか、あの過去の時点であの決断をした理由はなんだったのか、50年の時が流れれば、今現在、目の前にある現実の強力さのために過去の記憶は薄暗がりのなかでぼんやりしてくる。そして人は生きていく・・・死んでいく。