気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています、査定歴24年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。今回のテーマはもう何度目かの「LGBT」。企業コンプライアンスもからみますので、きちんとした理解をしておきたいと思いちょっと堅いタイトルの本を選んでみました。
ここ10年くらいの間にLGBTというワードが急にポピュラーになり、差別をなくそうという運動が活発になり、一方で差別的発言もあり、さらには差別的発言へのバッシング騒ぎもありました。そもそもLGBTというワード、レズビアンとゲイとバイセクシュアルとトランスジェンダーの頭文字を連ねて性的マイノリティ全体を象徴しているということなのですが、それ自体がわかりにくいのも事実です。
一方で、社会的認知がすすんだことでも診断書上の病名としてだけではなく、まさにお客さまや職場の同僚としても性的マイノリティの人たちと接する機会も増えてきています。
この本は性的マイノリティとは何なのかをきわめてわかりやすく解説してくれます。ポイントは「性」について4つの軸で考えるということです。その4つとは
① 法律上(出生届上)の性
② 性自認(Gender Identity)自分の性をどう認識しているか
③ 性表現 社会的にどうふるまうか(服装・言葉など)
④ 性的指向 (Sexual Orientation)自分の性愛・恋愛感情がどの性に向かうか
このうち最も重要なのが②の性自認(GI=Gender Identity)と④性的指向(SO=Sexual Orientation)です。性自認が法律上の性と同じであればシスジェンダー、逆であればトランスジェンダーとなります。一方、性的指向が法律上の性と同じであればホモセクシュアルで、逆であればヘテロセクシュアルとなります。GIとSOはまったく別の概念なのだという理解が大切です。
性的マジョリティとはシスジェンダーでヘテロセクシュアルということになります。性的マイノリティの人々もそれぞれ、例えばレズビアンとゲイはシスジェンダーでホモセクシュアルということになります。レズビアンとゲイはGIについてはシスなので性自認で悩むということはありません。一方、トランスジェンダーは法律上の性と性自認が一致しないのですからその違和感・悩みが深く、性別適合手術を必要とすることもあります。つまり性別適合手術受けるのはほぼトランスジェンダーの人たちなのだということが理解できます。
このようにGIとSO(二つ合わせてSOGIソジという)にわけて考えるとすっきり理解できますよね。すでにパワハラ防止指針において明確に「相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動」や「労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に曝露すること(アウティング)」はパワハラに該当することが明示されています。SOGIについてのパワハラということでSOGIハラとよぶらしいです。
LGBTについての社会的認知がすすんできて、とくにトランスジェンダーの人が性別変更手術を受け性別を変更することが増えています。それは、急に増えたというのではなく、社会の中で認知されずにいたものが認知されてきた結果と考えられます。そして社会に一定の割合で性的マイノリティが存在することを普通のことだと考えるべき時代になっているのです。SOGIを理解して、SOGIハラをしない・させないということですね。本書後半はたくさんの事例集になっていますので一通り読むと理解がさらに深まります。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2021年5月)。