El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ふたりの証拠(悪童日記第2部)

 常にそれまでを包含していく不思議な物語(ネタバレ少し)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

 

悪童日記で逃げたクラウスと残ったリュカ。そのリュカの戦後の物語が25歳(マティアスの死)の時点まで小説風に描かれる。それは戦後の共産党独裁からハンガリー動乱の時代を思わせる。

そして最終章、話は50歳の時点にとび、そこには旅行客として現れたクラウスがいる。リュカは30歳の時点でヤスミーヌ(マティアスの母)を殺していたことが発覚し行方不明になっていた。・・・・

ところが最後に附された調書からは、それまで展開してきた8章からなる小説こそがクラウスという旅行者=今は違法滞在者によって書かれたと・・・・

悪童日記がリュカの物語に包含され、リュカの物語がクラウスの物語に包含され、読者はクラクラした頭になって第3部「第三の嘘」へと誘われる。