常にそれまでを包含していく不思議な物語(ネタバレ少し)
悪童日記で逃げたクラウスと残ったリュカ。そのリュカの戦後の物語が25歳(マティアスの死)の時点まで小説風に描かれる。それは戦後の共産党独裁からハンガリー動乱の時代を思わせる。
そして最終章、話は50歳の時点にとび、そこには旅行客として現れたクラウスがいる。リュカは30歳の時点でヤスミーヌ(マティアスの母)を殺していたことが発覚し行方不明になっていた。・・・・
ところが最後に附された調書からは、それまで展開してきた8章からなる小説こそがクラウスという旅行者=今は違法滞在者によって書かれたと・・・・
悪童日記がリュカの物語に包含され、リュカの物語がクラウスの物語に包含され、読者はクラクラした頭になって第3部「第三の嘘」へと誘われる。