El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

イニシエーション・ラブ

「どんでん返し」というよりは「じわりとひっくり返される」快感

「どんでん返し」小説の代表みたいに言われる「イニシエーション・ラブ」を読んでみた。どんでん返しとはいかないものの、じんわりひっくり返されて、意外に爽やかな読後感。雨の日曜日の昼下がりの二時間、楽しめました。

文庫のカバーには

甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説ーと思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。

とある。描かれる80年代の世界とそこでの男女関係はまさに自分が生きてきた時代で、まるで自分のことが書かれているような気になる。最後から二行目というよりも、最後の見開き二ページで、確かに読み手の勝手読みがひっくり返されて、さらに確かに、その勝手読みをただすためにもう一度ページをめくり確認作業、仕掛けがわかればまったく違った物語になりますね。

身勝手な男の話だと思っていたら、(ネタバレにつき伏字)に替わる。でも、そうなっても、ああそんなこともあったかもーそんな時代でしたか80年代。