El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ショーペンハウアー

講談社現代新書のお手軽入門シリーズ

NHK「100分でde名著」シリーズの人気をあてこんでなのか、講談社現代新書でお手軽人物入門シリーズが出版されている。Kindle版は1冊500円と廉価なので「ショーペンハウアー」を読んでみた。

ショーペンハウアーの皮肉の効いた人生観は意外に好きだ。それを一言でいうと「生きることは苦」「より大きな幸せ(=楽)をもとめて苦労をしょいこむよりは、できるだけ苦労を減らすことそのものが幸せ」・・・そんな感じだろうか。

生まれに恵まれなかったり、ふいに選択を誤ったりすれば、すぐに落伍者になってしまう。運命はいつも非情だ。無理解な他者はどこにでもいて、いつでも挫折はすぐ次の曲がり角で待っている。何かを成し遂げて楽しい思いをすることがあっても、必ず退屈がやって来て、幸福感は長続きしない。満たされることのない欲望に振り回され続ける人生には、ゴールというものがない。

これって、まるっきり「現代思想入門」で書かれているラカンの対象aの話と同じではないか。

結局、どんな哲学も落ち着くところはここか・・・

若いころには納得できなかった話もこの歳になると納得できる、そんなことも多い。本書自体はやや内容が薄いので、紹介されている文庫本を1-2冊読んだほうがいいかもしれない。それにしても、サラリとした入門書なのに「今を生きる思想 ショーペンハウアー 欲望にまみれた世界を生き抜く」というタイトルは大げさ。