つかみは面白いが、次第に病的に・・・
中国史のキーワードの一つに「唐宋変革」というのがあり、著者が戦前の東洋史家内藤湖南の「宋代以降近世説」からの引用として
①貴族制度を全廃して皇帝独裁政治を始めたこと(貴族政治ではなく科挙の合格者による官僚政治の開始)
②経済や社会を徹底的に自由化する代わりに、政治の秩序は一極支配によって維持する仕組みを作ったこと(貨幣経済の浸透もここに入るか?)
・・・と、いうことで現在の躍進著しい中国の原型をこの宋代に仮託し、日本の歴史は宋代中国化への指向とそこからの逆行(これを江戸化と著者は呼ぶ)、つまり中国化と江戸化という対立概念が繰り返し出現することで説明されるというのが本書全体を貫く考え方。
中国化=政治は権威主義+経済は新自由主義と考えれば確かに現代中国の原型は宋代にありというのはうなづける。その切り口で日本の歴史を捌いていくのだが・・・時代が下るにつれてなんとも牽強付会になってきて、参考文献の具合のいいところだけを切り取ってあたかも根拠ありげにバッサバッサと歴史分析・・・途中からどうも変だということに気づくことになる。
切り口の面白さで少し引っ張られて読んでみたけれど、どうも躁病っぽい書き手だなと思ったら、数年後にうつ病で大学を退職しているらしく、その顛末を含む著作もあるようだ。病跡学という意味では読んでみようかという気にはなった。怖いもの読みたさではあるが・・・。