El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

次なるパンデミックを回避せよ

ジビエと言えばオシャレだが、所詮はブッシュミートと同じ

武漢でのCOVID-19発生、その根源はコウモリでさらに中間増幅動物はセンザンコウ(アルマジロに似て非なる)であることはほぼ間違いないらしい。例の武漢の市場では多種多様なこれらの生きた動物が肉食用に売られていた。なぜ、そんなもの食べるの?家畜を食べるほど豊かになっていない?冷蔵庫がなくて生かしている?なんて思っていたが逆、富裕層が好んで食べるらしい。

中国らしい話だと思っていたが、この本を読むと日本でも野生動物と人間の生活域が近接してきてシカやイノシシやクマが捕獲されたり処分されたりしてるわけで、それらは日本でも「ジビエ料理」として食べられているので、他人事ではない。現に、2003年に兵庫県でシカ肉の生食からE型肝炎の感染があった。

この本はそうした動物由来のパンデミックが将来も繰り返し起こりかねないことに警鐘を鳴らす。ポイントは5つ。

①森林破壊

東南アジアでジャングルが破壊・造成されてパームヤシのプランテーションになり類人猿が民家近くまで出没するようになっている。同様の野生動物の生活圏の破壊による種の絶滅や人間の生活圏への移動が世界中で起こっている。

②温暖化

代々木公園のデング熱騒ぎなど、地球温暖化で蚊などの生存圏が拡大している。

③ブッシュミート

特にアフリカで顕著なのがタンパク源としての野生動物食が急増している。ジャングルの開発で人間が増えたことが原因。ブッシュミートハンティングが日常化して猿やネズミにコウモリをハンティングしてさばいて売ってそれを食べる。どのステップでも感染の原因になる。HIVやエボラなど。

④ペット

日本はこれが怖い。ラスカルブームのアライグマには狂犬病ウイルスがいる。ペットとして密輸入される動物にどんな病原体がいるのかわからない。

⑤肉食

チキン・ブタ・ウシと大量飼育の大量消費で生物多様性が失われ(もっとも一番増えたのは人間だが)、感染病原体にとって拡大しやすい環境。鳥インフルで何万羽も処分されるなどのニュースでもわかるように、生育環境は感染が蔓延しやすくなっている。

もっとも人間を殺している動物は「蚊」(二番目は「人間」)。次のパンデミックはそこまで来ている。ブッシュミートやペットなど思わぬところからパンデミックになるということを「想像力の欠如」により見過ごしている。