El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

承久の乱

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」予習三部作 完読

本書が三部作の中で最初に書かれたもので文字通り後半は「承久の乱」メイン。

前半は院政の始まりから保元・平治の乱、源平合戦、鎌倉幕府、北条義時の台頭、実朝暗殺までが時系列にあっさりと書かれているので、その部分は「源氏将軍断絶」「鎌倉殿と執権北条氏」を読むべきであり、やはり三冊読むことで理解が深まると考えたほうがよい。

個人的には、人物の興味深さで言えば、頼朝・政子・実朝・後鳥羽上皇・泰時であり、大河ドラマの主役を義時(小栗旬)にしたのは、まあある程度長生きもしなくてはならないのでしかたないのだろうが、冒険でもある。

現時点(第1回放送の一週間前)では、最後どこまで描くのかはっきりしないし、実朝・後鳥羽上皇・泰時はキャスティングさえ発表されていない。その未知の部分も含めて楽しみ。

本書では、承久の乱、そして乱後の三上皇配流あたりの描写はなかなか読ませる。自分が命令しさえすればどうとでもなると思っていたであろう帝王後鳥羽上皇が、鎌倉方に負けて隠岐に配流となり残り19年の生涯を隠岐で過ごし、にもかかわらず和歌を拠り所に知的生活を続けたところには感服。

また乱そのものの勝敗を決した瀬田・宇治・芋洗は、今は無き巨椋池を囲み、南からの京への入り口として要衝だったことがよく理解できた。山崎山荘のベランダから眺めたあの風景もまた違った様相を帯びる。次に行くときには後鳥羽上皇を祀る水無瀬神宮をぜひ訪ねてみたい。