El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

花粉症と人類

あくまでも花粉症の文化人類学(医学的ではまったくありません)

この本によれば、日本で花粉症がポピュラーになったのは1980年代とかなり新しい(今となってはそうでもないか!?)。1980年にはまだ20代だった私の認識でも大学あたりまで花粉症という言葉自体あまり聞いたことがない。その後、聞くようになっても「なんか、かっこつけてるんじゃないの、鼻水たらしてるくせに」みたいな反応が一般的だった。それから40年経って、若年層の半数以上が花粉症だというから驚き(推定有病率61.6%)。迫ってくる花粉症の蔓延の波をギリギリ逃れた世代なのだと実感。

世界三大花粉症はイングランドの「牧草花粉症」、アメリカの「ブタクサ花粉症」、そして日本の「スギ花粉症」。原因が花粉という解明にはダーウィンもからんでいた。そしてなぜか文明化と花粉症がリンクしていることから花粉症の国=文明国みたいな優性思想も出現。アメリカでは、花粉が来ない場所に避暑ならぬ避花粉リゾートができた、ブタクサの除草剤の開発と除草剤耐性ブタクサのいたちごっこ・・など花粉症の歴史と文化人類学的考察が丁寧に語られる。それはそれで大変におもしろい。

ただし花粉症の人が、花粉症が良くなるヒントが書かれているのかなと思って読むと、そこはまったく書かれていません。著者は植物学者で、人間を翻弄する花粉の味方かもしれません・・・