El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

或る少女の死まで

 金沢で読み犀川を渡る

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫)

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫)

 

 金沢の文学館を巡る旅の途上で読む。奥付には2004年に読んだと自分で書いているが全く記憶にない。往路のサンダーバード泉鏡花「春昼・春昼後刻」を読み、和倉温泉の旅館で室生犀星のこの本を読む。三つの自伝的短編からなる。「性に目覚める頃」が金沢らしく、またその頃の犀星の暮らしぶり、世相、男女関係、結核死など読ませる。

室生犀星文学記念館は犀星の生家のあった場所に建てられている。香林坊から犀川大橋を渡ると川岸近くに犀星が養子に行った寺が今もある(多分、大きさはかなり縮小しているか)。まさに「性に目覚める頃」の賽銭泥棒の舞台であり、読んだばかりの小説の舞台に自分がいることの不思議。