El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

春昼・春昼後刻

眼に見えない、語られない そこが鏡花

 能登和倉温泉への旅の途上、特急サンダーバードの車上にて読む。こうしたたゆとうとした時間で読むのが良い、泉鏡花。明日、金沢の文学館を訪れる予定なので一冊は読んでいこうと持ってきたもの。タイトルから胡蝶の夢のような老荘的なものを予想していたが、もやがかった話の中で男と女、子供そして死。印象は残る。詩のようなものでもあるか。日頃、忙しない科学書ばかり読んでいる目には新鮮かもしれない。