El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ゴッドドクター 徳田虎雄

 比類なき医療群像劇

ゴッドドクター 徳田虎雄 (小学館文庫)

ゴッドドクター 徳田虎雄 (小学館文庫)

 

徳田虎雄、徳田ファミリー、徳洲会ー栄枯盛衰のドラマの源泉は徳田の異様なパワーによるものだと思っていた。しかし、本書を読めばそれは徳田の磁力に引き寄せられた医師・看護師・薬剤師・事務職員たちが繰り広げるシェークスピアさながらの群像劇だったとわかる。やがて登場人物たちは一人また一人と徳田と対立して決別していくが決別した彼らのその後の生き様もまた深い余韻を残す。高度成長期・バブル・震災と同時代を熱く駆け抜ける群像。日本のシチリア(と著者が呼ぶ)徳之島・奄美の人・政治・風土も印象的。

現在も湘南鎌倉総合病院の特別室でALSの療養を続けている徳田虎雄、彼の人生と交錯した多くの医師たちの生き様、徳之島。様々な切り口のどこをとっても一級の評伝