El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

怪帝ナポレオン三世

 パリの今がある

怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史 (講談社学術文庫)
 

普通選挙こそが独裁者を生む、というポピュリズムの原型ここにあり。クーデターは義弟モルニー、経済面はエミール・ペレール、都市開発はオスマン(とオスマンの選んだ人々)と周囲の人に恵まれた20年の第二帝政。一方で、イタリアのカブール、ドイツのビスマルクなど国政政治に振り回され、悪妻もあって終焉。

ヒーローでもアンチヒーローでもなさそうだが、現在のパリの原型を作ったことは間違いない。幕末から明治維新にかけての出来事と考えると、女性や庶民のしたたかさを感じます。

第二帝政期の再評価は1999年発行の中央公論社・世界の歴史22巻にも書かれており、マルクス主義史観からの脱却していく中で歴史家の間では次第に常識化していきつつあった考え方と思われ、著者がいうほど独創的な発想ではなさそう。

とはいえ、カブールが送り込むハニー・トラップ美女など歴史書にはでてこないエピソードは多く、歴史書と併せて読む楽しみがある。