El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ブックガイド(61)「お酒」まだ飲んでるの?

――「お酒」まだ飲んでるの?――

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

  • 作者:小田嶋隆
  • 発売日: 2018/02/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 新年あけましておめでとうございます。気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしております、査定歴22年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。今年の正月休みは長かったですね。休みの間にお酒の量が増えたという人も多いかもしれません。というわけで今回のテーマは「アルコール」。

 酒は百薬の長!適量のアルコールは体にいい!という考えがあり、われわれ酒飲みはまあそう思っていますよね。ところがここ数年、アルコール摂取と寿命の関係について大規模試験の結果が発表され(https://lab-on.jp/academia/1091/)アルコールそのものは「百害あって一利なし」、一定量以上では明らかに寿命の短縮につながることがわかってきました。40歳時点でのアルコール摂取量と平均余命の関係は一週間のアルコール摂取量100グラムまでを標準グループとしたとき、Aグループ:週100~200グラムで6カ月の余命短縮。Bグループ:週200~350グラムで1~2年の余命短縮、Cグループ:週350グラム以上で4~5年の余命短縮になります。

 「純アルコール重量=お酒の量(ml)×度数(%/100)×0.8(エタノールの比重)」ですので、ビール1缶(5%で350ml)=14g、酎ハイ1缶(8%で500ml)=32g、日本酒1合(15%で180ml)=22g、ワイン1本(12%で750ml)=72g・・・ちなみに私は週100gくらいでぎりぎり標準グループです。しかし40歳ころは2-3倍は飲んでいたかも(汗)。みなさんはどうですか?

 私は年齢を重ねるにしたがって酒量が落ち、少ない量で良い気分になるので経済的と喜んでいたのもつかの間、去年くらいからは良い気分でいられる時間が短くなり酔い覚めの不快な時間が伸びてきました・・まさに苦しきことのみ多かりき。

 たまたま一週間も飲まない日が続くと飲酒そのものから次第に遠ざかり、いっそ断酒してしまえばいいんじゃないかと思ったりもしますが、その一方で、なじみの小料理屋や焼鳥屋で飲むときのあの空気感から離れるのが残念だったり、夫婦で外食するときも和食なら日本酒、洋食ならワインという習慣は捨てがたいと感じたり・・と、いろいろ理屈をつけてしまいなかなかお酒から遠ざかれません。

 そこで断酒成功者・小田嶋隆さんの書いた本「上を向いてアルコール」を読んでみました。私とほぼ同年代のコラムニスト小田嶋さん、断酒歴20年ですから40歳くらいで断酒したことになります。お酒をとりまく楽しげなライフスタイルから離れた状態を小田嶋さんは「4LDKのマンションに住んでて2LDKだけで暮らしているような感じ」と表現してますねえ、確かに!

 そんな気分とどう折り合い着けていくのか、飲酒のかわりに何に時間を費やすのか、などなどのノウハウは大いに参考になります。そして「アルコールを媒介に手に入るものがないわけではない、しかしそうして手に入れたものはアルコールと同じで必ず揮発してなくなってしまう・・・」・・その通り!。

 まずは、自分の飲酒量をアルコール重量換算で計算してみてください。B、Cグループであればアルコール依存度はおそらくかなり高いはず、この本を読んでいっそ断酒してみるのも手ですよ。いずれ飲めなくなりますから。

 アルコール依存症、日本では診断されているのは100万人、予備軍が300万人くらいらしいです。日本のアンダーライティングの現場では飲酒習慣で危険選択はしていませんがリスクは高いということは認識しておいたほうがいいと思います。健診書に飲酒毎日3合と書いてあったら・・本来は条件体にすべきかも。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2020年1月)