El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

精神科医が教える聴く技術

DSMではない精神医療への回帰。期待したい。

精神科医が教える聴く技術 (ちくま新書)

精神科医が教える聴く技術 (ちくま新書)

 

傾聴とは、そして心理カウンセリングとはなるほどこういうことか!平易なことばでカウンセリングのキモを教えてくれる。
語られる言葉を黙って傾聴し、語り手の心の深層に流れる感情を聴き取る(=感じ取る)。その聴き取った感情への自分(聴き手)の感情をまた聴き取る。そうすると聞き手は語り手の感情に賛成しながら聴き続けることができる。
語り手は語ることで感情の流れがととのっていき、感情がきれいに流れる――語る前には、語らないためにあいまいでぼんやりした感情が言語化されることでクリアな感情として語り手自身に認識される――。その流れがさらにその奥にある感情の流路となる。そして次第に感情の根底にある葛藤が語られ理解される。

そうなって初めて葛藤を解決するための心理的ジャンプ(トリックスター)が起こる。

自分自身の感情と対するときは語り手=聴き手=自分自身と考えて、心の中で同じステップをふめば自分自身を知り自己理解から自己受容へと至る。そうすれば悩みが消える。

カウンセリングやオープン・ダイアローグ、言葉による治療が最近また脚光を浴びてきた。
DSMで薬剤メインになってしまった精神医療が精神分析方向に回帰していこうとしているのだろうか。DSMしか知らない若い精神科医は対応できるのか?