El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

バブル経済事件の深層

時は流れ、人も事件も埋没していく

バブル経済事件の深層 (岩波新書)

バブル経済事件の深層 (岩波新書)

 

 ①「尾上縫と興銀」は、こんな馬鹿馬鹿しいパロディじみたことを日本中でやっていたという寓話。②「高橋治則と長銀」はカリスマ起業家と守旧的銀行のあくなき闘い。高橋の生き急ぎ感がドラマティック。③大和銀行NY支店事件は銀行も官僚も島国根性だけで世界進出をめざした末の悲喜劇。④日債銀破綻は、数億の退職金で逃げ延びたバブル期経営層とその後始末に送り込まれて逮捕までされることになった窪田弘のコントラスト。

令和になり、バブル世代も高齢化、人も事件も時の流れに埋没していく。もはや、この本に出てくる金融機関もすべて消えた。大蔵省でさえ・・。こうした記録はとても大切だと思う。この先、政情不安や、たぶんちょっとだけ姿を変えたバブルや危機に翻弄されそうになったとき、ささやかでも本書から得られる教訓が頭に残っていれば役に立つだろう。