El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

すごい進化

進化の結果は最終的には合理的・・・を疑わなくていい

 「進化の結果は(種の維持・増殖にとって)合理的であるはず」というテーゼを無条件で前提としている。その上で、昆虫を中心に繰り広げられる「一見すると不合理」な行為・性質が実は、「適応と制約」の中では、合理的(=合目的的)なのだということを、さまざまな観察や実験を通して理論づけしてくれる。若い研究者にもかかわらず文章がなめらかで題材も面白く一気に読める。

特に、有性生殖と無性生殖を二分論で考えるのではなく移行しうるものとして考えるというくだりは特に興味深い(LGBTには進化論的根拠がある・・・わけないか?)。

一方で、鮮やかすぎる理論のすすめかたは、牽強付会?と思わせる部分もある。そもそも「進化の結果が合理的であるはず」というテーゼは本当に正しいのかしら。研究者は研究対象にとって神の目で観察しているわけだが、個々の生き物は合理性をめざして行動しているわけでもなかろう。

たとえば日本や先進国で人口が減少していることは進化論的には「一見すると不合理」だが、「適応と成約」の中での合理性をめざしているということなのだろうか、個々の人間のふるまいの結果にすぎないのではないか。などなど、いろいろ考えさせてくれる好著ではある。