El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病

免疫チェックポイントって何だ?

巷で話題の免疫チェックポイント阻害による抗がん剤オプジーボ」のことがすっきりわかる一冊です。

20世紀の間は「がん免疫療法」というものはいかにもうさん臭いものでした。丸山ワクチン、ピシバニール、クレスチンなどなど。うさん臭さの根底には、効果があるというのに、その作用機序がナゾということではなかったでしょうか。そもそも免疫機構そのものがまだまだ漠然としていた時代でした。ところがヒトゲノム計画以降のバイオテクノロジーの発達は、リンパ球の細分類を可能にし、様々なリンパ球の働き、それを実現する分子機構を明らかにしました。21世紀になって一気にすすんだ分野です。一方で、「がん」の分子病理学もおなじテクノロジーによって急速に進歩しました。EGFRやALKのような、がん細胞表面に現れるレセプタータンパクなどの遺伝子異常が明らかになり、その部分を攻撃する分子標的抗がん剤が抗体医薬として開発される時代がきたのです。

そして、「リンパ球によるがん認識」と「分子標的」という二つの最先端を組み合わせたものがオプジーボニボルマブ)です。本書は、リンパ球研究の黎明期からオプジーボまで、多くの研究者の人生遍歴をからめながら、そのすべてがまるで小説を読むように理解できるという稀有な一冊です。このあたりのことまったくわからないという人にこそ薦めたい。読み終わったあなたは、きっと誰かに薦めずにはいられなくなるでしょう。

著者二人のコンビでブルーバックスから「現代免疫物語」「新・現代免疫物語」に続く第三弾として出版された「現代免疫物語beyond」ですが、まずは第三弾の本書を読んでみてください。本書だけであなたは現代免疫学の最先端に触れることができることうけあいです。