El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

死の貝 日本住血吸虫症との闘い

本 VS Wikipedia

Wikipedia3大文学をご存じか?Wikipediaのノンフィクション事件記事で、読み始めると思わず引き込まれてしまう秀逸なものベスト3として

①八甲田雪中行軍遭難事件 ②三毛別羆(ひぐま)事件 ③地方病(日本住血吸虫症)がそれにあたるらしい(本書の帯から)。

その中でも地方病(日本住血吸虫症)のWikipediaは見ての通り、質・量ともに抜群の出来栄え。まあ、前後関係から言えば本書のほうが先だとは思うが。

ご存知のように、①新田次郎「八甲田山死の彷徨」、②吉村昭「羆嵐(くまあらし)」と著明な作家によって刊行され定番化している。

③は1998年(平成10年)に小林照幸氏によって「死の貝」というタイトルで刊行されたのだが、その「死の貝」が2024年5月になって文庫化されたのでさっそく読んで見た。

私の母校の医学部構内の通りには著名な先輩の名前がつけられているのだが、メインストリートの名前は「宮入(みやいり)通り」といい、並木のきれいな通り。もちろん宮入慶之助先生の名前をとったもの。いやあ、寄生虫という古いテーマをWikipediaで学びなおし、自分自身の学生時代の思い出にまでつながった!

本書は、そういうきっかけにはなったが・・・内容的にはWikipediaで十分か。というか、できすぎでしょうWiki!