El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

透明な迷宮

カバー絵のムンクのエッチングがいい

第4期(=後期分人主義)の先鞭をつけた短編集とのこと。全6編。

「透明な迷宮」・・異国の地で監禁され、見世物として「愛し合う」ことを強いられた男女は、帰国後、その記憶を「本当の愛」で上書きしようと懸命に求め合う。意外な結末は、双子の片割れを妻に持つ身としては複雑な感じ。

「Re:依田氏からの依頼」・・震災後の時間感覚のずれを土台に「時間間隔」を描き不思議な味わい。

「family affair」・・北九州でいかにもありそうな小事件を北九州弁(筑豊弁?)でユーモラスかつスリリングに。あの遊覧船から拳銃すてるのは難しそう。

他に「消えた蜜蜂」「ハワイに捜しに来た男」「火色の琥珀」、すべてちょっとアブな感覚で生きる主人公たち。