El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

双調平家物語(3) 栄華の巻2

「大化の改新」から藤原不比等の死まで

まだまだ全然平家物語になりません。著者も書いているうちにどんどん深みにはまっていった感じ。しかし、だからこそ「読めばすべてがわかる」日本史物語になっていると言えますね。とにかく目次の次にある天皇家を中心にした系図を何度も確認しながら読み進めます。日本史の教科書では10ページ程度の範囲が300ページ×3冊くらい。天皇家の過去ということにもなるので、さすがに高校の教科書などでは書けないのではあろうが。

大化の改新以前の女帝(推古天皇・皇極天皇)は蘇我氏の勢力維持という意味合いが大きかったが、蘇我氏が滅んで天智・天武の天皇親政時代がありその後継者たちの思惑から(主には、若年の皇子が壮年になるのを待つため)、前帝の后(きさき:皇女でもある)が中継ぎとして女帝になる(持統天皇・元明天皇・元正天皇)。元明天皇の710年に平城京遷都。

一方、大化の改新の功労者・藤原鎌足の死後、政権中枢から離れたように見えた藤原不比等はこれら女帝時代に相談役として復活し巧みに娘たちを帝に入内させていく。不比等の妻、県犬養橘美千代も含めて、女性の時代であり、そこを押さえたことで藤原氏の時代になっていく。

医学的には近親婚が多いように見えるが兄弟姉妹といっても異腹(母親が別々)のことがほとんどなので、近親率は低いのだろう。それでも直系であることや藤原氏にこだわると近親率が高まっていろいろ問題人物が出てくるのか。

また、皇女が産めば皇統であることは確実なので、異腹の男子よりも皇女の子のほうが皇統である信頼性が高いという思いもあったのではないか。ゆえに、一旦は天武系になった皇統が、皇女をたくさん持った天智系に戻っていく。