El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

鬼火(上・下)

ハリー・ボッシュ シリーズ(22)

だれもが価値がある、さもなければ誰も価値がない(ボッシュの座右の銘)

ついにボッシュ・シリーズ最新刊に追いついた。ハリー・ボッシュ69歳の設定。ボッシュは痛めていた膝に人工関節を入れる手術の後の設定。今回はボッシュの事件、レネイ・バラードの事件、ミッキー・ハラーの事件が三つ巴の状態で進行していく・・・しかし、今回は魅力的な女性暗殺者というスーパーなものの登場と逮捕であっさりと終幕しプロットはいまひとつ。

ボッシュがCML(慢性骨髄性白血病)であることを途中で告白している。

格差社会「塀に囲まれた屋敷に暮らす金持ちか、さもなくば路上生活者か」の実像が描かれているようでもあり、それらを含めて名言を上巻から引用しておく。

その詩人は、持たざる者たちのことを、運命の風に吹かれるままに転がっていく人間回転草(タンブル・ウィード:動画参照)と詠んでいた(上P26)

事件を個人的なものとして捉える、というルール。どんな事件も個人的な(=自分事)として捉えれば、腹が立つ。それが炎(ほむら)を搔きたてる。その炎が毎回最後までやり抜く気力を与えてくれる。(上P39)

視野狭窄の一形態だった。科学捜査におけるDNAの登場によって、科学が捜査を奪取する(=DNA結果に騙されて真実を見失う)ケースをボッシュは繰り返し目撃した。(上P315)


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