El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

シリーズ中国の歴史 ④ 陸海の交錯 明朝の興亡

 江戸時代に似た明の300年

陸海の交錯 明朝の興亡 (シリーズ 中国の歴史)

陸海の交錯 明朝の興亡 (シリーズ 中国の歴史)

  • 作者:檀上 寛
  • 発売日: 2020/05/21
  • メディア: 新書
 

 本シリーズ③でのモンゴル(元)の扱いがあまりにも簡略であったのに比べ本書は一冊全部が「明」史。300年続いたこと、鎖国政策が銀によるグローバル経済に巻き込まれて衰亡したことなど、なんとなく徳川300年に似ている。

明の時代は日本では室町幕府の盛期から江戸時代初めにあたる。日本の戦国・織豊時代が明の末期にあたり、ポルトガル人やオランダ人によるヨーロッパの大航海時代の影響をもろにうけた。鉄砲の伝来(火器の逆流)、銀の流通によるミニグローバル化など、中華というより世界の中の「明」になってしまった。

秀吉そしてヌルハチの頃には国家矛盾が膨れ上がっており、秀吉との闘いで疲弊した後、ヌルハチホンタイジにあっさり乗っ取られ滅亡。このあっけなさも明治維新に通じるところがあるような。