具体性のパワーがある。
ノーベル文学賞受賞ということで読んでみた。多くの場面を輻輳させながらひとつのタペストリーを作り上げていくリョサの手法(らしいです)はなかなか見事。ひとつひとつのエピソードに具体性があり(まあ半分ノンフィクションだからですが)、しっかりとドミニカの世界に取り込まれていく。日本の某ノーベル賞候補作家のようなあいまいさや情緒的なところがなく、きちんとクライマックスがあり、そこにパワーを感じる。こうしてきちんと起承転結をつけてその中に思想を織り込む作家のほうが私は好きだ。自分自身が単純なだけかもしれないが。