El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

チボの狂宴

具体性のパワーがある。

チボの狂宴

チボの狂宴

 

ノーベル文学賞受賞ということで読んでみた。多くの場面を輻輳させながらひとつのタペストリーを作り上げていくリョサの手法(らしいです)はなかなか見事。ひとつひとつのエピソードに具体性があり(まあ半分ノンフィクションだからですが)、しっかりとドミニカの世界に取り込まれていく。日本の某ノーベル賞候補作家のようなあいまいさや情緒的なところがなく、きちんとクライマックスがあり、そこにパワーを感じる。こうしてきちんと起承転結をつけてその中に思想を織り込む作家のほうが私は好きだ。自分自身が単純なだけかもしれないが。