El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

性の進化史

一夫一婦制が男をダメにする!?

 タイトルは「性の進化史」と意味深だが、「性染色体の研究史」ですね。まじめな本です。

「染色体」って、46個あって、22対(=44個)の常染色体とXYまたはXXの2個の性染色体からなるということ、DNAの2重らせんがさらに折りたたまれたもの・・・ということは中学理科レベルで学びますが、それ以上のことはあまり知る機会がないのかも。DNA・遺伝子・染色体それぞれの関係はYouTubeなどで勉強するとよくわかります。

また、染色体(クロモゾーム)は細胞分裂の時以外は細胞核の中にほどけた形(染色質:クロマチン)として「あわあわ」と存在しています。それが細胞分裂の時だけ糸巻き(ヒストン)にまかれながらコンパクトに凝縮して23対になるというわけ。こういった基礎的なところは書いてはあるけれど端折り気味ですから予習して読むと理解が進みます。

DNAが自由自在に研究対象になる以前は染色体が研究の花形だった時代があるのでしょうね。DNA時代にはちょっと主流からはずれた分野という気もします。そんな染色体分野では性染色体のことがテーマとして面白いということで、本書もほぼ性染色体についてのさまざまな話題で飽きさせません。特にY染色体がますます壊れていって男がいなくなる?(数百万年後らしいですが)とは。

一夫一婦制がオス同士の精子の競争を封じ込めたので、競争力のない精子Y染色体が授精したり、もともと授精能力の乏しい精子Y染色体を生殖医療でむりやり授精させたりしていると、進化論的に弱いY染色体が残ることになるというのが一つの結論でしょうか。乱婚や婚外子の容認なんてとこまでは踏み込んでいませんが、ちらっとそんな方向性を感じてしまいました。