El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

「中世社会のはじまり〈シリーズ日本中世史 1〉」

イベント・ドリブンではなく、カルチャー・ドリブンな中世史

 このシリーズの後、「応仁の乱」「観応の擾乱」なんて新書が出てヒットして、ちょっとした中世ブームが今も続いている。故にブーム前のこのシリーズはちょっと淡白な感じ。中世全体で200ページ強の新書4冊というのは今から思えば無理があったか。「院政」「源平合戦」「前九年・後三年・奥州藤原氏」「鎌倉幕府」「蒙古襲来」「建武の中興」「室町前期」「室町後期」「応仁の乱」「戦国時代」「信長・秀吉・家康」・・とイベントは盛沢山だもの。

なので、ボリュームの制約のせいか、本書は少し視点をずらして書かれている。歴史イベントメインではなく、文化・文学的な流れの中にイベントが織り込まれている。だから、例えば、世阿弥鴨長明がどういう歴史イベントに関わっていたのかという、これまであまり考えなかったことを気づかされる。

そこが、ちょっと新しい感じがした。