El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉

大正デモクラシーゆえに・・
目先の利得のための妥協のもたらす悲劇

 最後のパラグラフ「成果を保持しえず、『大正デモクラシーにもかかわらず』という局面と、運動の論理が状況のなかで、統合と妥協へと移行してしまう『大正デモクラシーゆえに』という双方の要素を持ちながら、1930年代には戦時動員の時代が始まる。」でぴったりオチがついている。その前のパラグラフにある市川房枝氏らの東京婦人市政浄化連盟が自己実現のために体制に協力し政党基盤を崩すことになったことなど、目先の利得のための妥協のもたらす悲劇。

それにしても、藩閥・元勲政治そのものも政党政治っぽく衣替えしてしまい対立軸が不透明に・・最近よくみる浮草のような日本政治はここにもあったのか。「戦前日本のポピュリズム - 日米戦争への道 」(筒井 清忠著 中公新書)を読んだあとで本書を読んだが、大正デモクラシーが結局10年そこらでポピュリズムで戦争翼賛へと変質していくことを知っているだけに、「何なんだ、この国は!」それにしてもポイントポイントで首相級の政治家がこれほど簡単に暗殺されるのはなぜ?護衛はつかないのか?