El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

クック 太平洋探検 全6巻

押せ押せの姿勢が最後に裏目

 20050804 「クック 太平洋探検」(岩波文庫)を読んでいると、船の中でおこった船員同士のトラブルに関して「船における私の権威にたいして加えられる最大の侮辱である」とあった。船長と同じ立場の私にとっても私を無視して船員の間でトラブルを起こされることに対して毅然とした態度をとらなくてはならない。

20050824 「クック 太平洋探検」で繰り返し出てくるモチーフ。いろいろな島で原住民がとにかく盗む。そんなとき盗まれたものの価値による損得勘定ではなく、「盗み」そのものの悪徳性を教え込むために盗みを徹底的に追及する。それに相当の手間をかける。つまり「まあ損害もすくないからここはひとつ穏便に」ではなく「ルールを教えるためにきちんと対応する」。金子光晴ではないが日本人は「穏便に」を繰り返していくうちに不満がたまってアモックとして爆発する傾向がある。クックの態度、相手がどういうレベルの時にはこの態度をとるべきであるか。部下が増えた今、肝に命じるべきこと。

20050831 朝の電車で「クック 太平洋探検」(岩波文庫)全6巻を読了する。クックは最後にハワイの宗教的儀式に関わって死ぬ。あれだけ洞察力があったのに人には弱点もある。強硬な姿勢を見せなければとがんばりすぎたところも死につながったという気もする。ノンフィクションでは久しぶりに長いものを読んだ。