El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

世間の目

世間の目

世間の目

佐藤直樹「世間の目」(光文社・図書館本)を読む。阿部謹也と世間学会を作っている佐藤直樹だが刑法学者ということもあって犯罪事例を切り口に日本の世間を語る。最近のわけがわからなかった事件のいくつかの内情を知ることができた。内容は阿部謹也ものと大同小異でしかないが携帯やメールなどの取り上げ方、希望格差社会・社会の二分化というバブル以降の動きが世間を強化している、あるいはITによってより狭い世間に包囲されていくようすなどの取り上げ方は新しい。しかし世間、世間と言ってみても日本で生きていく以上はどうしようもないのではないだろうか。うまく世間をコントロールしていける人間が求められているのでは。