El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

リスボン大地震

ポルトガル史・イエズス会史としても秀逸!

地震の詳細 第1章 万聖節の日 第2章 秩序の回復 第3章 被害の詳細

リスボン大地震。1755年11月1日発生、死者数は東日本大震災とほぼ同じなので、当時の人口から考えると、数倍に相当する災害だったようだ。地震と火災と津波。

地震まで 第4章 ポルトガルの変遷 第5章 名ばかりの黄金時代

地震前のポルトガルの歴史。先んじた船と航海術により大航海時代の先駆。黒人奴隷の創始、国内での奴隷がポルトガル人の血の一部を作っている(!)。ブラジルからの金・ダイアモンドによる繁栄ー巨大建築、一方で人口流出による疲弊、異端審問など頑迷なカトリシズムが席巻した時代。

地震後 第六章 説教師と哲学者 第七章 不死鳥のごとく 第八章 啓蒙主義と独裁

キリスト教=すべてを神の御心に帰す時代への決別ーそのために破壊は必要だった。カルヴァーリョが主導する復興、啓蒙主義の時代、しかしやがて独裁へ。

カルヴァーリョは、災害は国家を利するものに転換できるだけでなく、事実、国家にとって必要不可欠なものであるという意見を述べている。「国家を根底から変革する要因が常に政治的なものであるとは限らない。恐るべき自然現象が帝国の様相を一変させてしまうこともしばしば起こる。こうした自然界の異常は、時として必要なものだということができる。なぜなら、それはほかの何よりも、世界にあまねく広がる帝国を断固として侵食しようとしている旧弊なシステムの数々を根絶するのに寄与してくれるからだ。・・・我々はこんなふうに言うことができるー国々の目を覆っている霧を払いのけ、真に有用な知識の光で照らし出すには、農地が荒廃し、都市が破壊されることも必要なのだ、と。」(P137)

東京が関東大震災、太平洋戦争で2度灰燼に帰したことで、常にリニューアルしてきたことを考える。再生のためには破壊が必要だということ。さらに廃墟に既得権を持つ者たちをいかに排除して新しい秩序をもたらすことができるのかということ。

カルヴァーリョの指導力で再建なったリスボンであったが、歴史の流れは再生リスボンも容赦なく押し流していく。