El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

開かれた社会とその敵【第2巻】下

4分冊中第4冊、ここから読んだ方がいい

3月から刊行されていた岩波文庫のポパー「開かれた社会とその敵」全4巻が完結した。3月に第1巻を読みかけて内容も構成も難解で挫折していたのだが、第4巻の末尾に100ページにわたる訳者解説がある。この解説に沿って読めばかなりわかりやすい。急ぎの方であればこの解説だけでもいいんじゃないの、というくらい。

そこで解説を読みながら第1巻を読んで理解できるようであれば第2巻、第3巻を入手しようかな、と思う。

ポパーの考えをものすごく砕いて書くと―

「世界は歴史法則に沿って動いている」とか「マルクス的階級闘争」とか、大上段にふりかぶった観念にろくなものはない。

歴史にも社会にも、因果関係で規定されるような「法則」があるわけではない。世の中は、その場その場で、皆でワーワー言い合って、つまり各自の知識や経験を伝えあいながら、少しずつ問題解決していくものだ。

思想家や政治家の脳内にある「こうあるべき」「これさえやればいい」という観念の現実化を図ることは、必ずや地上に地獄を出現させる。

プラトン、ヘーゲル、マルクスを批判的に分析することでこの結論に到達するらしいのだ。こうご期待。