El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

窯変源氏物語(12)

㊼椎本・㊽総角・㊾早蕨

宇治十帖、何とも煮え切らない感じの物語でかなりイライラしながら読むことになる。

㊼椎本(しいがもと)・・宇治に隠棲する八の宮の美人姉妹を巡って、アドバンテージに余裕を見せている薫と、細かいことは気にせずとにかくモノにしようとする匂宮。やがて八宮が死に、美人姉妹もいよいよ庇護者を見つけねばならなくなる。姉と妹の間でも微妙な意識の違いがある。薫が考えすぎている間に・・・・

㊽総角(あげまき)・・総角とは組みひもの結び方「総角に長き契りを結びこめ同じ所に縒(よ)りも合わなむ」。総角結びからは四方に紐が伸びる形なので、ここでは薫・匂宮・姉・妹の四角関係を表すのかも。薫・姉君・妹君が三角ににらみ合って、遠慮しあっているうちに、匂宮がさっさと妹君を犯して妻にしてしまう。姉君は病で死に・・・薫には何も残らない。

㊾早蕨(さわらび)・・陽気なドンファン・匂宮に妹君を奪われ、姉君は死に、薫はそれでも、「姉君の思い出として妹君をお世話するのだ・・・」と言いながらも、実は妹君を狙ってもいるのだが、匂宮は妹君を都に移す。都では夕霧(右大臣)が娘・六の宮を匂宮か薫に嫁がせようと画策。愛憎と政治的思惑が交錯する。