父親として身につまされる・・・
宮沢賢治は37歳で結核死したし、生前はあまり評価されることがなかったので、その伝記は賢治を中心に据えると座りが悪い。そこをこの作品では賢治の父・政次郎の視点から描くことで宮沢家の来歴、父親と息子、兄と妹、質屋の仕事の葛藤など、周辺事象含めてきわめて丁寧に描かれる。創作部分もあるのだろうが、宮沢賢治の生涯を知るには最適の一冊だ。
賢治は「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」などの童話作家、「春と修羅」などの詩人、どちらも現在は名声が確立されているが、生きている間はほとんど評価されることがなかったようだ。小さい頃は頭がよかったが長じるに及んで社会適合性のなさがはっきりしてきて、まあ体のいい引きこもり。それをさまざまに案じる父。やがて妹が結核で死に、賢治自身も結核に。
賢治を菅田将暉、父親を役所広司が演じる映画が5月に公開されたばかり。ちょっとルックスがよすぎて違和感はある。