El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ゲームの王国 下 <Audible>

確かに傑作、ストーリーも哲学も重層的すぎて・・活字で読みたい。

Audibleに聴き入ってしまうおもしろさ。「記憶と人生」「歴史と人生」「人生というゲーム」いろんな切り口で読める。レトリックも巧み。上巻はほぼポルポト時代のカンボジア史で暗いのだが、そこを突き抜けてこその下巻なので、がんばって読み通してほしい。

ただし、Audibleではどうしても鮮明でない部分が出てくる。時間の倒置などについていけないし、カンボジア人の名前も短くて似たような名前が多くて混乱する。

活字で読みたかった・・・というのが正直な感想。とにかく、著者の他の作品に読み進まずにはいられない。新しい才能に巡り合えた喜びを感じる。

人生はわずかに残った印象的な断片と、その断片を補完する現在の自分と、直近の一年間で成立している。

記憶はアナログメディアで再生するたびに劣化し、その劣化を補うたびに現在の自分が入り込んでくる。

この小説の来歴と自分の人生を語る「あとがき」もまたすばらしい(文庫版だけ?)。ー勢い余って、小川哲さんの妻、漫画家の山本さほさんの作品「岡崎に捧ぐ」も読んでしまった・・・いいコンビだ。。