El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

双調平家物語(12) 治承の巻

平氏 創業者 (清盛)VS 二代目社長(重盛)

平氏政権の創業者・平清盛と二代目社長・平重盛のバトルを軸に平氏政権の最盛期が過ぎていく日々をまるまる一冊で綴る。

苦労人の創業者・平清盛に対して、朝廷・院・藤原氏などとのバランス主義の二代目社長・嫡男の平重盛の対比が面白い。ワンマン社長・平清盛はとにかく口を出したい、任せられない上司の典型、一方の平重盛は自重しすぎで逆に父の言うことの逆を行きたい。そのさや当ての中で、しばしの平和な年月に朝廷・院・藤原氏(摂関家に傍流)さらには信西の家系の人々がまあ、実に細かい人事や婚姻に血道をあげる。特に微妙な出世競争はまさに現代の官僚と同じ。

そうした京都のサラリーマン社会(清盛は引退した社長として福原在)があり、一方で比叡山を中心とする僧兵たちの社会があって、それが交差してぶつかりあう。

最終的に、清盛が鹿ケ谷の陰謀(というか、陰口ばかりの飲み会?)情報を利用して、反対勢力を叩き潰す。それをまた重盛が調整に入る・・・とツッコミとボケがうまくコンビとして働いている間はよかったが・・・この後、重盛が先に死んでブレーキが効かなくなった清盛の暴走へ、次巻へ続く。

平和を壊すことでのし上がるものがいる・・・という事実。しかし、壊し続けることで自分サイドも壊れてしまうし、寿命というものもある。そうするとしばしの平和が訪れ、また破壊者が現れる・・・