ドストエフスキーのギャンブル依存がリアル!
スターリン時代のロシア人作家・医師の作者がモスクワからレニングラードにドストエフスキーの旧跡巡りの旅に出かけ親戚のおばさんのところに泊まる・・というリアルタイムの話の中に、途中で読むドストエフスキー3番目の妻の日記が入り込んできて、ドストエフスキーと妻の新婚旅行(?)、帰国後の相続問題、ドストエフスキーの臨終などを織り込んでいく。その日記の中の回想もさらに織り込まれるという入れ子構造で、なかなか重層的で面白い。まあ、そういう文学的なあれこれは、併載されているスーザン・ソンダクの「ドストエフスキーを愛するということ」にもしっかり書かれている。
読者を驚かせるのはバーデン・バーデンでのドストエフスキーのギャンブル(ルーレット)狂いのひどさ。指環や服までに質屋にいれてとにかく賭博にのめりこむ。ちょっと勝っては、大きく負けてすっからかんの繰り返し。ゲン担ぎやら、アップダウンする妻への態度など、りっぱなギャンブル依存症。のめりこむこの性格があの作品群を産んだとも言えるのだが・・・周囲は大変だな。
生きている間の過剰感と穏やかな死、なんだかトルストイとはどこまでも対照的。