El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

神戸・続神戸

神戸~泣いてどうなるのか♪ 

神戸・続神戸 (新潮文庫)

神戸・続神戸 (新潮文庫)

  • 作者:西東 三鬼
  • 発売日: 2019/06/26
  • メディア: 文庫
 

私自身、いろんな偶然で神戸を終の住処にすることになった。ちょうど、書店で「神戸・続神戸 西東三鬼」を見つけて買って読んでみた。不思議な読後感。

「神戸」は、戦争末期の神戸トーアロードの下宿みたいなホテルを舞台に繰り広げられる、悲惨な状況の中、ユーモア&ペーソス。昔からたくさんの外国人が暮らしていた神戸・・・というとオシャレっぽいが、戦争や貧困で日本人も外国人もふきだまって生きている。ちょっと底がぬけた自由な感じも楽しい。

「続神戸」は終戦直後の話、やや説明的でペーソスよりもそのころの神戸の姿が浮かんできて興味深い。どちらも文章のキレがいいのはさすがの俳人。句集も楽しんでみたいと思わせてくれる。