——この先の、あなたの20年は?——
気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしてます、査定歴21年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。今回もアンダーライティングそのものからは若干はずれますが、新年、そしてもうすぐ元号も新しくなるということで、「未来論」を取り上げてみます。
「未来論」といえば、昨年の出版界では「未来の年表」や「ホモ・デウス」が売れました。読んでみましたが、個人ではどうにもしようがない予測で不安を煽るだけだったり、あまりにも先の話でどうもリアリティがない。「だから、どうしろっていうの!」という感じでした。
そこで、もっと具体的な、すぐこの先の自分に役立つ本はないのか・・、ありました。この先の20年間を「稼ぐ」という切り口で読み解く本書、「未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038」です。2019年から1年ごとにテーマを掲げて、データなどからその年に起こることを分析し、それにともなって生まれるビジネスチャンスは何か、だめになるビジネスは何かという形式で20年分、かなり具体的で面白いです(年号は必ずしも中身とシンクロしてるわけではなさそうです)。
ちなみに2019年のテーマはコンビニ業界。2019年沖縄にセブンイレブンが出店し全都道府県三大コンビニが1店もないところはなくなるらしいです。一方で飽和状態でもあるわけで、地方における買い物弱者へのデリバリーサービスなどがビジネスチャンス、いわば「新しい御用聞き」への変貌が必要だと、なるほど、わかるわかる。
こんな感じで、2020年は自動運転車が一部実用化というテーマから、自動車産業の未来像。2021年はインフラ老朽化(橋や高速道路などなど)の改修需要による震災後需要が減ってくる地元建設業者のビジネスチャンス。2024年アフリカ(ルワンダ?)で富裕層が急増、いよいよ保険会社もアフリカ進出でしょうか?2025年団塊世代が75歳でシニアこそが最大の消費者へ。2029年中国人口のピークアウトをうけて日本の少子高齢化対策ビジネスの輸出。2032年インドのGDPが日本越えから、インドで今がんばる日本企業(スズキ、コクヨ、ユニ・チャームなど)のビジネスモデル分析。あとはおもしろそうなタイトルだけになりますが・・・2034年「AIが大半の仕事を軽減化、あるいは奪う」、2036年「老年人口が3分の1、死者数も最大に。」2037年「トヨタ自動車が100周年」と続きます。
人生100年時代ですが、トヨタや大手生保などのような100年企業が存在する一方で、会社の平均寿命は10年くらいだそうです。「人生100年、会社10年」ですから、一つの職業で一生食べていくことはかなり難しい未来。そんな世界を俯瞰し、これから伸びそうな分野、縮みそうな分野を見極めて自分なりの見取り図と戦略を描くこと、さらに複数のプロフェッショナル分野を構築すること、などなど若い人にこそピッタリのアドバイスが満載です。参考文献もきっちりつけてありタイトルから受ける印象よりもずっとしっかりした一冊でした。
本書の著者は40歳、ゆえに前向きです。やはり未来論は、その未来を当事者として生きていく人こそが語るべきだということがよくわかります。60歳前後の人が書くものは、わたし自身も含めて、自分にはもう関係ないけど・・という態度が見え隠れすることが多いですものね。ああ、本を読んでいても世代交代を感じるこの頃。とはいえ、老け込むことなく、今年もアンダーライティングの今を探るために役立つブックガイドを続けていきたいと思っています。よろしくお願いします。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2019年1月)