El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ブックガイド(3)日本人は特殊?

——日本人は特殊?——

日本では査定するときに人種による違いをあんまり意識していませんが、日本人以外の在日居住者が保険に加入してくるケースが増えてくると健康や身体の人種差を考えないでいいのか・・と思いますよね。その裏がえしで、ブラッケンリッジを手本にして査定していると、知らないうちに欧米のそれも白人を対象に作られた査定基準をそのまま日本人に当てはめている場合も多く、それはそれでいいのかと思うことも。また、外資系の再保険会社は日本人の健康の特殊性ってどれくらい意識しているのでしょうか。

今回紹介するこの本は、健康の人種差、つまり「日本人の健康や疾病の特殊性」にフォーカスをあてています。著者の奥田先生はテレビ「世界一受けたい授業」ほかマスコミで見ることも多く、本書も発売6ヶ月ですでに8刷と売れています。タイトルからは世間にあふれるなんちゃって健康本?と感じられるかもしれませんが、そこはブルーバックス。読んでみるとけっこうマジメに、きちんと論文を引用しながら、かつコンパクトに、「総論」「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「がん(とくに、胃がん・大腸がん・乳がん)」という章立てで、日本人と欧米人の違いをまとめてくれています。血圧や脂質などいわゆる数値項目の査定基準を改定しようと思う場合に一読しておくと役立ちます。

引受査定をしていると、21世紀になって100キロオーバーの肥満に遭遇することが激増してきたと実感しますが、そのあたりも日本人の特殊性で説明できそうです。また、単なる特殊論で終わるのではなく、それが海に囲まれた国土におけるエピジェネティックな遺伝子変化によって起こったのだという科学的理論付けも納得感あります。

「目からうろこ」というまでの内容ではありませんが、「日本人の健康・疾病面での特殊性をすっきりまとめてくれた、それも参考資料と参考URL付きで!」というところでしょうか。短時間で読めますので後悔はない一冊です。(by 査定職人 ホンタナDr. Fontana 2017年8月)