El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

火と灰

ポピュリズム民主主義 VS 権威主義的寡頭制

火と灰―アマチュア政治家の成功と失敗
 

 イグナティエフ「火と灰」(図書館本)を読了。

文化人と政治とでも言えばいいのか。多くの民主主義国が採用している選挙による政治というものの実相を描く。わが祖父の選挙の時期のことを思い出す。また、現在の安倍政権もまた選挙によって選ばれたとも言える。そういう政治というものは、投票する大衆との関係を無視することはできない。まさにテレビやネットなどがどういう役割を果たしていくのか、今はまだ不透明だ。

ハーバードの教授だったイグナティエフが政治の世界に首をつっこみ失敗する、その過程を記録に残した。そうした衆愚にもにた政治を忌避するのではなく、そこもコントロールできる人物が真の政治家ということなのだろう。

引用しておく
世界の少なくとも半分には、権威主義的寡頭制と市場原理が結合した体制が存在するー中国とロシアが思い浮かぶ。それらの国々はいずれも我らが時代の、厄介で、党派的で、分裂したデモクラシー政治よりも、自分たちの政治のほうが優れていると主張している。この理念の戦いにおいて最終的にはデモクラシーの勝利が保証されると考えるに足る理由はない。歴史は自由の味方であり、デモクラシーは息を吹き返したライバルに勝利するだろうという保証はまったくないのだ。この国際的次元からみれば、政治家の責務は国内のデモクラシーを擁護することだけではなく、デモクラシーの美徳を世界中に証明することである。