El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

綿の帝国 グローバル資本主義はいかに生まれたか(2/4)

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第4章:労働力の獲得、土地の征服

 家内手工業的に綿布を作るインドや中国とは異なり、賃労働のイギリスでは労働生産性を高めるというインセンティブがあった。そこでとにかく大量の綿糸、綿布を少ない労働力で生産することが急務。そして、教科書でおなじみ、ジョン・ケイの飛び杼、ジェニー紡績機、ミュール織機といった発明。綿糸、綿布の爆発的な生産力アップが起こった。それが産業革命。

 綿糸、綿布の爆発的な生産力アップの結果としてインド、中国の手工業は衰退。一方で、大量の原料・綿花の供給元としてカリブ海やブラジルにおける土地の簒奪とそこに黒人奴隷を送り込んでの綿の栽培。黒人奴隷を仕入れるときには綿布がその対価として支払われるというどこまでもイギリスに都合のいい仕組み。

第5章:奴隷制の支配

 カリブ域の奴隷反乱、土地のやせなどから綿花の生産はアメリカ南部へと移る。そこでは入植者は先住民から収奪した土地に入植したら、奴隷を大量に投下して綿づくりをすすめる。さらに、奴隷を担保に資金をイギリスの金融市場から得るというから、奴隷が生産財でもあれば資産でもあるというおぞましい状況。

 イギリスが奴隷貿易を禁止する中で、独立したアメリカはそうしたヨーロッパ的な法規制がない、まさに奴隷労働によって財産をなすには最適な状態。政治家たちもみな奴隷所有者。

 奴隷(=労働者)を囲い込んでこき使い生産性をあげて儲ける。これは今も、身分が奴隷ではないというだけで、多くの労働者に当てはまる。奴隷ではなくても奴隷的な行動原理になってしまうしくみが出来ていき産業資本主義へ移行していく。われわれもまた黒人奴隷なのだ。

第6章:産業資本主義の飛躍

資本主義は、戦争資本主義から産業資本主義への分岐点あたりで生まれた
 戦争資本主義:植民地主義+奴隷制の容認+土地の収奪
 産業資本主義:工業化+国家による保護貿易+賃金労働者
      (+原料供給地かつ市場としての戦争資本主義地域の存在)

 戦争資本主義地域(ラテンアメリカ・アメリカ南部・インド・中国)の没落←簒奪できる土地の減少、奴隷供給のコスト増(損耗・教育できない・製品の低廉化で奴隷のコストが相対的に高くなる)

「賃金労働者」という発明。機械化で労働生産性が↑すると、奴隷労働よりも賃金労働のほうが効率的・自己再生産的 (ここまでで300ページ さらに続きます