El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

南海トラフ地震の真実

著者を含めて誰もが、自分の見つけたものを盛りがち

南海トラフの発生確率は70~80%…数字を決めたのは科学ではなかった!「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」 ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のために、ないがしろにされる科学――。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。

・・・・と、宣伝文句に書いてはあるものの

 地震予測とは所詮この程度のもの。他にも大してすぐには役に立たない研究はたくさんあるわけで、でも研究は続けていれば何か画期的なことが判明する可能性は否定できない。その研究継続性を確保するために成果を盛るのはありそうな話。

 日本のようにどこででも地震が起こりかねない国土であれば、首都圏や太平洋岸の人口密集地帯の防災をまずやるべきであり、その意味では南海トラフでも静岡県、愛知県、三重県の防災は必要だと思う。和歌山、四国、宮崎あたりはまあついでに・・・レベルだろうか。

 どちらかというと、地震は「予測できない」という前提にたって「いつどこで発生しても柔軟に事後対応ができるD-MATなどの体制づくり」「致命的になる原発の事故だけはおこらないようにする」くらいの対策でよい。

地震学者が予測結果を盛ったように、この著者は自分の発見のインパクトを盛りすぎているように思う。どっちもどっち・・・