El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

騎士団長殺し

長い長いライトノベル?

もうすぐ新作が出るらしいので・・このタイミングで読んではみたものの

第1部「顕れるイデア編」第2部「遷ろうメタファー編」それぞれ500ページの大部。3日ほどで全部を読んだが・・・あれっ、何が書かれていたんだ??

結局相変わらずの村上春樹ペースにのせられてしまい心地よく読み進めて、読み終わったときに何も残らない感に「あ、またやられた」となってしまう。そういう意味では作家としての才能があるということか。「ちょっと複雑なライトノベル」、そう書くとファンに怒られそうだが、毎回毎回同じ気持ちになるというのは根本的に自分の考える「小説」とは違う何かで、その何かというのはラノベ、そうライトノベルっぽい。

ライトノベルもどきなのに、自己ブランディング力がそうさせているのだろうが、あたかも深遠な何かがありそうな錯覚を起こさせているだけ。メタファーのまま話が終わったら、もうそれはファンタジー。

それなのに、それなのに、音楽(特に本作はクラシック、わけてもモーツァルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」のあらすじを知らないと意味が分からないはず)や、絵画をちりばめることですごく芸術性が高いような気にさせる。私などのようにこれはただのファンタジーと思うと逆に「読み手の能力が足りない」と断罪されかねない。

唯一、小説の舞台が小田原で、そこに住んだことのある身にとってはなんとなく入り込めるファンタジーではありました。ま、小田原でこんなハイソなことがあるとは思えないが・・・・。