El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

すごいトシヨリ散歩

歳をとってからの旅のヒント・・・やがて悲しき

池内紀(いけうち・おさむ)1940年生と川本三郎1944年生が雑誌の企画で3か月ことに行っていた対談記事(2016年3月~2019年9月)をまとめて2021年に刊行したもの。池内は2019年8月に亡くなっているので彼の最晩年の対談ということになる。

対談の期間、池内は76~79歳、川本は72~76歳ということで、70代の爺さんが二人でテーマをきめて3か月ごとに喫茶店などで対談していたわけで、それはそれで好ましい。対談後には編集者らも一緒に一杯やっていたようだ。

そうした定期的な活動を維持することが必要だな―と10年若輩の私は思う。もっとも作家でもない私には、そんな活動をアレンジしてくれる編集者や原稿料という経済的裏付けもないわけで、そんな中で定期的な交流を絶やさないためにはそれなりの工夫が必要かな。

対談のテーマは、旅・鉄道・映画・雑誌・レコード・喫茶店とのんびりしたもの。行きたいところを記した自分なりの地図を作っておくだとか、ビジネスホテルと土地の居酒屋を利用して旅をする気楽さなどは、なるほど使えそうなアイデアだ。用もないのに東京に行って2-3泊ホテルに泊まって映画を観たり美術館に行ったりするーそれができるのは年寄りゆえか。

人生の目標なんてものから遠く離れて日々をどう愉快で快適に生きるのか工夫次第。