El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

台湾、ローカル線、そして荷風

また一人、老境の先人を見出す

この週末読んでいるのは川本三郎さん。

永井荷風の評論やエッセイをちらっと読んだことはあったが、最近出た「ひとり遊びぞ我はまされる」のタイトルで魅かれて、この本のシリーズとしてすでに出ている「そして、人生はつづく」「ひとり居の記」「台湾、ローカル線、そして荷風」の三冊の中から一番最近の「台湾、・・」を読む。

東京人に連載中の「川本三郎 東京つれづれ日記」を数年ごとにまとめたもの。1944年生まれなので78歳。15年ほど前に当時57歳の奥様を食道がんでなくされたらしい。
さらに調べていくと「マイ・バック・ページ」という全学連闘争の時代を背景に書いたものがあり、そこに描かれる朝霞自衛官殺害事件の取材記者として捜査妨害で逮捕され朝日系の記者をクビになったという経歴。この話、妻夫木聡主演で映画にもなっている。若き日、妻の死、そして老残の日々、すべてを何らかの形で文章に残しているわけだ。

このシリーズ自体は独居する川本氏が日記のように綴るローカル線の小旅行を主体に、それにまつわる映画や本。乗り鉄とも少し違う、鉄道と物語の関係性に重点をおいたという鉄道・駅舎ファンの記録。もともとが映画評論と文芸評論の人なのでやたら詳しい。それに加えて最近は年1回の台湾旅行も興味深い。

そうやって妻亡きあとの日々を過ごしている姿が淡々と描かれて、こちらもまた淡々とした気分になる。続けて読んでいきたい。

この本で見てみたいと思った映画「起終点駅」釧路駅、「下妻物語」下妻駅。