El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち

日本の膨大な赤字国債財政の破綻に向けて私は何に賭けたらいいのか?

2007年に起こったリーマン・ショックというかサブプライム・ローン債破綻の全貌と、その中で、破綻を予見し逆張りすることで巨万の富を得た4人の物語。4人といっても3人のヘッジファンド主催者と1人のドイツ銀行トレーダーで、4人組というわけではなく、それぞれが独自に破綻を予測して行動していた。

「マネー・ボール」で有名な著者のマイケル・ルイスは、20代にソロモン・ブラザーズで債権トレーダーをやっていて、「ライアーズ・ポーカー」という内幕物でデビューし作家業に転向したらしい。「ライアーズ・ポーカー」でテーマにしたウォール街の投資銀行の無茶苦茶がその後20年間熟成して大爆発を起こしたのだから、まあまさにリーマン・ショックこそルイスが書くべき物語だったわけ。タイトルが直接的でないので損をしている感じはあるが、あの事件のドキュメンタリーとしては秀逸なものになっている。

サブプライム・ローン債やそれをまとめたCDO、CDOが破綻した時の保険を商品化したCDSと、仕組みは一般人にはやや難解なのだが藤沢数希氏の巻末解説が秀逸なのでまず、この解説を読んでから本文を読んだ方がわかりやすい。いくら金融工学的な化粧をほどこしてもそもそもの住宅ローンの貸倒率が想定を超えれば破綻するのは当たり前。

この本を映画化した「マネー・ショート」と、違う角度からこの事件を見る「リーマン・ブラザーズ最後の4日間」も併せて見たが、やはり原作と解説を読んでいろいろ理解していないとわかりにくいと思う。

藤沢数希氏が巻末解説で書く「日本の膨大な赤字国債財政の破綻」が来たときいったいどうなるのか、それが誰にもわからないことなのか、どういう準備をすればいいのかさっぱりわからないのがとにかく不安になる・・・